あなたは1勝クラスや2勝クラスで何度も名前を見る馬に違和感を覚えたことはありませんか?
同じ条件クラスで長期に渡り、走り続けている馬はいわゆる「能力が頭打ち」になっている可能性があります。
今回は、データに基づいて能力頭打ち馬を客観的に見極め、条件クラスでの切り時判断をするための具体的な指標をご紹介します。
勝ち上がりの壁:条件クラスを勝ち上がる馬の平均出走回数は?
競馬において、馬の能力には必ず「天井」が存在します。どれだけ素質があっても、その馬固有の能力の限界を超えることはできません。では、その能力限界はどのように見極めることができるのでしょうか?
本分析では、各クラスの「勝ち上がり馬の平均出走回数」に着目しました。
クラス | 勝ち上がり馬平均出走数 |
1勝クラス | 5.4 |
2勝クラス | 4.4 |
3勝クラス | 4.2 |
このデータは過去5年でそのクラスを勝ち上がった馬たちが、勝ち上がるまでに何回そのクラスで走ったかの平均値です。
条件クラスを勝ち上がる馬は平均で1勝クラスでは約5回、2勝クラス、3勝クラスでは約4回の出走で昇級していきます。
言い換えれば、この回数を超えても勝ち上がれていない馬は、苦戦している状態と言えます。
この平均値を今回「勝ち上がりの壁」と呼ぶこととします。
- クラスを勝ち上がる馬の平均現級出走数は1勝クラスで約5走、2,3勝クラスでは約4走
クラス頭打ちの壁:データが示す明確な分岐点
続いてはこの平均出走回数を元に勝ち上がり平均出走数から何走を境に成績が変わるかを見ていきたいと思います
以下は勝ち上がり平均出走数からプラス何走によって成績が変化するかを表したデータです。
勝ち上がりの壁+出走回数 | 該当数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1回 | 7780 | 8% | 15% | 22% | 89% | 79% |
2回 | 6585 | 7% | 15% | 22% | 91% | 81% |
3回 | 5562 | 6% | 14% | 21% | 73% | 77% |
4回 | 4707 | 6% | 13% | 20% | 70% | 78% |
5回 | 3969 | 5% | 13% | 21% | 72% | 79% |
6回 | 3352 | 5% | 12% | 18% | 76% | 77% |
7回 | 2850 | 6% | 13% | 20% | 96% | 80% |
8回 | 2417 | 5% | 11% | 18% | 63% | 72% |
9回 | 2033 | 5% | 11% | 19% | 61% | 77% |
10回 | 1729 | 4% | 10% | 18% | 70% | 80% |
11回 | 1486 | 6% | 12% | 20% | 83% | 80% |
12〜15回 | 4033 | 4% | 9% | 15% | 60% | 61% |
16〜20回 | 2411 | 3% | 7% | 13% | 67% | 73% |
21回以上 | 1965 | 2% | 6% | 12% | 42% | 60% |
このデータから条件クラスでの平均出走回数から11回を超えるかどうかが、馬の能力頭打ちを見極める決定的な分岐点であることが見えてきます。
注目すべきは勝ち上がりの壁+11回を超えてからの連対率と複勝率の急落です。
+11回までは一定の連対率と複勝率を維持していたものが、12〜15回になってくると大幅に下落します。
このデータから「平均出走回数+11回」という明確な分岐点を覚えておくだけで、能力頭打ちの危険な馬を効率的に見分けることが可能になります。
この分岐点を今回「クラス頭打ちの壁」と呼ぶこととします。
- 1勝クラスなら16回以上、2勝・3勝クラスなら15回以上現級での出走歴がある馬は、馬券的には切ってしまった方が良い
掲示板外経験が少なければまだ伸び代あり
「クラス頭打ちの壁」という分岐点をさらに精査するため、今度は現級で「掲示板外になった回数」に着目します。
5着以内に好走したことのある馬は現級で通用する目処が立っているというのは直感的に理解できることですが、これが「能力頭打ち馬」の見極めの判断に有効なのかを実際のデータで確認してみましょう。
掲示板外数 | 対象馬数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1回 | 651 | 22% | 38% | 51% | 83% | 81% |
2回 | 1756 | 16% | 32% | 44% | 80% | 81% |
3回 | 3423 | 13% | 26% | 37% | 82% | 81% |
4回 | 4396 | 10% | 20% | 31% | 81% | 79% |
5回 | 4688 | 8% | 18% | 28% | 81% | 82% |
6回 | 3761 | 8% | 17% | 27% | 78% | 83% |
7回 | 2707 | 8% | 17% | 27% | 82% | 83% |
8回 | 1790 | 6% | 15% | 24% | 63% | 83% |
9回 | 1225 | 6% | 15% | 25% | 84% | 84% |
10回以上 | 1640 | 5% | 13% | 23% | 78% | 90% |
この結果からは掲示板外数が少ないほど成績が良いという明確な相関関係が確認できます。
データからはおおよそ掲示板外数5回を目処に成績が下降気味となっていることがわかります。
「クラス頭打ちの壁」に近づいている馬のうち、すでに現級で5回以上掲示板外になっている馬は他に強いファクターがない限り馬券的には切ってしまうのが得策と言えるでしょう。
掲示板外数が少ない馬ほど勝率、連対率、複勝率は高くなっており、掲示板外数という質的指標によって真の能力差を判別できることを示していると考えられます。
- 多くの出走経験があっても掲示板内に頻繁に絡む馬は、依然として馬券に絡む可能性を秘めている
- 掲示板外が多い馬は直感的な感覚は正しく、能力が頭打ちになっていると判断せざるを得ない
近走の成績で判断
半年以内複勝圏内 | 対象馬数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
なし | 11716 | 6% | 15% | 24% | 84% | 86% |
あり | 14321 | 12% | 24% | 35% | 76% | 79% |
「勝ち上がりの壁」を超えた馬の中でも、直近の実績が成績に影響することがデータから確認できます。
半年以内の複勝圏内経験の有無で区分すると、経験がある馬は経験のない馬と比較して勝率、連対率、複勝率のすべての指標において明確な優位性を示しています。
一方、オッズに織り込まれているのか、複勝圏内経験のある馬の単勝回収率と複勝回収率は、経験のない馬より数値が低くなっています。これは直近の好走実績がすでにオッズに反映されていることを示す結果と言えます。
勝率・連対率・複勝率の差異を踏まえると、「クラス頭打ちの壁」を超えた馬を馬券に組み込む場合、半年以内に複勝圏内に入った経験のある馬を選択することが成績向上に寄与します。特に相手候補や複勝圏内を狙う馬券において、この指標は有効な選択基準となります。
- 直近の好走履歴は頭打ち馬判定においてのも重要な判断材料となる
まとめ
今回は「能力頭打ち馬」の客観的な判断基準を様々な角度から分析してきました。
- 条件クラスを勝ち上がる馬の現級出走回数は1勝クラスで5回、2,3勝クラスで4回(勝ち上がりの壁)
- 勝ち上がりの壁を超えて現級に滞在している馬の場合、勝ち上がりの壁+11回を目処に成績が下降(クラス頭打ちの壁)
- クラス頭打ちの壁以内の出走数の場合でも、掲示板外数が多ければ頭打ちの可能性が高い
最終的に「頭打ち判定条件」として、
- 出走回数:1勝クラス16回以上、2勝クラス15回以上
- 掲示板外数:勝ち上がりの壁以上、クラス頭打ちの壁以内の出走数で5回以上の掲示板外経験
- 直近半年以内の3着以内経験:勝ち上がりの壁以上、クラス頭打ちの壁以内の出走数で半年以内の3着以内経験なし
という3つの視点からデータを見ていきました。
最後に頭打ち条件に当てはまる馬とそうでない馬の成績を見て今回の記事を終わりたいと思います。
対象馬数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 | |
条件外 | 7240 | 14% | 27% | 39% | 77% | 77% |
頭打ち判定 | 43639 | 4% | 10% | 16% | 75% | 76% |
穴馬を除いた最終オッズ40倍以下のデータは下記になります。
対象馬数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 | |
条件外 | 6891 | 15% | 29% | 40% | 80% | 79% |
頭打ち判定 | 22926 | 7% | 16% | 26% | 77% | 81% |
表のデータが示す通り、頭打ち判定馬は条件外の馬と比較して勝率、連対率、複勝率のいずれも大きく下回っています。
一方で回収率に関しては、頭打ち判定馬と条件外の馬の間に大きな差はなく、これは頭打ち馬の能力限界がすでにオッズに織り込まれていることを示しています。
馬券戦略としては、頭打ち判定馬を軸馬として選択することは避け相手候補としても慎重に評価する姿勢が重要です。
軸が決まっていて相手候補を選ぶ際の基準として頭打ち判定をうまく使って長期的な回収率向上に繋げていきましょう。